ワインには、単一ぶどう品種のみで造る「単一ワイン」と複数ぶどう品種のアッサンブラージュ(組み合わせ)で造る「ブレンドワイン」の2種類があります。ワインは農作物である(ぶどうのみで造られる)ため、その年の天候の影響をダイレクトに受けます。単一ワインは、その品種の特徴が鮮明に反映される反面、天候不順でふどうの出来の悪い年(オフ・ヴィンテージ)にはワインの品質が低下するリスクがあります。一方でブレンドワインは、それぞれの品種固有の特徴は中和されますが、味わいに調和がとれて土壌や気候の特徴がより強調されるワインになります。また、ブレンドワインには、天候不順などによるリスクを分散して、安定的に高品質なワインを造ることができるメリットがあります。生産年(ヴィンテージ)によってブレンド比率を変えることもできるので、ワイナリーのスタイルに合わせたワイン造りが可能です。
ワインティスティングの視点からみると、品種の違いを見る上では単一ワインが分かりやすいですが、ブレンドワインの方が味わいのバランスを取りやすく、多彩な香りや味わいが出せるのでワインとしての可能性が広がりますし、ワイナリーのスタイルが把握しやすくなります。ブレンドワインの伝統的産地といえば、フランスのボルドーとシャンパーニュです。どちらも卓越したアッサンブラージュの技術によって、世界中を魅了するワインを造り続けています。
アッサンブラージュは、単に混ぜればいいという単純作業ではありません。数%のブレンド比率が変わるだけで、ワインの味わいが劇的に変わる繊細な作業でもあり、造り手のセンスが問われます。それぞれの品種の特徴を熟知し、熟成による味わいの変化も予測しながら完成度の高いブレンド比率を追求していくためには、造り手が思想を持ち、体現する確かな知識と技術が必要です。ブレンドワインを飲むことで、その造り手の思想とセンスをより近くに感じることができるのです。
日本のぶどうは元々ワイン専用品種ではないものも多く、ワインにしたときにアンバランスになりがちです。ワインの品質を高めるためには、その土地に合ったワイン用のぶどう品種を栽培する適地適作が近道になりますが、日本は海外に比べてワイン用のぶどう栽培の歴史が浅いため、様々なぶどう品種を植えながら土地との相性を検証している段階です。また新興ワイナリーでは、定植から間もない若木(ぶどうの樹齢が若いこと)が多いのも、単一ワインでは味わいのバランスを取りづらい要因のひとつです。
そこで、ボルドーワインのように複数の品種をブレンドすることで、ワインのカタチを作っていくことが有効な手段になります。それぞれの品種に役割があり、補完し合うことでワインの味わいの完成度を高めていくことができます。日本ワインの造り手の中には、品種のブレンドだけにとどまらず、同じ品種でも特徴が異なる複数の畑のブレンドや、樽熟成したワインと樽熟成していないワインをブレンドするなど、様々な創意工夫をしてワインの品質を向上させています。日本ワインは産地形成の途上段階ですが、途上段階だからこその多様性やワクワク感が日本ワインの魅力でもあります。日本ワインにあまり馴染みのない方や、バランスのよい調和した味わいのワインを好む方、日本ワインならではの新しいワインの可能性に触れたい方に「ブレンドワイン」をおすすめします。